BerlutiのZERO CUTシューズの凄さ

ホールカットシューズは文字通り一枚革で作られたものです。基本的にはヒールの部分につなぎ目がありますが、正面から見たときには余分なつなぎ目が見えないのでラグジュアリー感を感じさせるシューズの代名詞となっています。
ホールカットの靴を作るには、大きな面積に傷がない革を確保する必要があるので、相対的に価格が高くなります。商業ベースでこれを実現するには、ある程度の受注を確保することが必須となります。さらに、吊り込みなど技術的にも高いものが要求されるため、それ双方の職人を抱え込む必要があり、規模の大きなメゾン、あるいは高単価で受注するビスポークのお店でないとなかなか提供が難しいです。

そんなホールカットのシューズですが、その上を行くのが「まったくつなぎ目のない靴」です。「完全にシームレスな靴」といったほうがわかりやすいかもしれませんが、円形の革を切り出し、そのまま吊り込みを行うので、価格・技術ともに最高レベルのものとなります。これを商業ベースで提供しているブランドは皆無で、基本的には小規模かつ高単価のビスポークシューズ店しかありませんでした。しかし、この秋から個数は限定ながらBerlutiが「Zero Cut」ブランドで提供をはじめました!これは驚くべきことです…。その紹介ムービーがこちら(BerlutiHPから引用)。

最高級の革(高強度、高弾力、厚みが一定など)から円形に革を切り出し、それをそのまま吊り込む様子がわかります。吊り込み方も特殊で、水を吹きかけながら行っているので相当革に負担をかけているのでしょう。様々な角度から力を込めるために、木型上部の革に切込みを入れてラストを金具に固定しています。つりこんだあとは、履口となる部分にパターンを書き込み、そのまま切り出しているのが特徴的です。
ムービーでは不明ですが、このムービーにあるのは仮の吊り込みで、このあと一旦外してライニングのパターンをとって切り出し、一体化を行っているものと思われます。そして再度吊り込み、ボトムメイキングへと進めているのでしょう。
通常の靴作りとは行程の順序などが異なっており、いかにZero Cutの靴を作るのが難しいことかが物語られています。月産15足ということで、限られた職人にしか作ることができないのでしょう。
価格は52万円で、縫い合わせたホールカットシューズであるアレッサンドロの約2倍の価格です。シームレスになると価格が2倍になるというのもさすがBerlutiという感じがしますが、価格に見合う価値を見出したのであれば、希少価値の高いこのZero Cutシューズは買いでしょう。

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