伊勢丹靴博のShoes Art Gallaryでひときわ注目を浴びていたのが三澤則行氏の作品の数々です。三澤氏は、自身の名を関したビスポークシューズのブランドを手掛ける傍ら、靴教室やアートワークも行うなど、日本の靴職人の中でも一線を画し独特の活動を展開している注目の職人です。ニューヨークでも個展を開くことができるほど注目を集め、Shoes Artの分野を切り開く三澤氏の作品を今回は間近で見れるチャンスでした。それら作品の中で、特に注目を集めていた作品をいくつか紹介したいと思います。
ベンツとのコラボ!靴は乗り物?
個人的に一番好きな作品です。メルセデス・ベンツとのコラボ作品、「Concept Shoe」です。車のタイヤを排除しつつ、ヒールを積み上げた靴と車の足回りの融合カー。技術的には、ホールカットの革を使いつつ、クルマのデザインを丁寧に形作っており、吊り込みの技術の高さが伺える作品だと思っています。
ヒールの積み上げも曲線美を追求。クルマのスピード感も出ている |
ヘッドライトはダイヤで印象的に、出し縫いもピッチを細かくエレガントに |
途方も無い時間のかかったボタンブーツ
続いては、こちらのボタンブーツ「Curved Boot」。もちろんカーブしているのはヒールを指しているのでしょう。しっかりと自立するこのボタンブーツは、履くことを意識したものではありませんが、ソールとヒールの作りはすごいです。ソールはきっちりとベイス(木釘)で底付けされており、靴作りの中でも丁寧な製法で作られています。そしてヒールが何よりすごい。一枚一枚革を貼り合わせ、立体的な造形美を追求しています。一枚貼るだけでも結構な時間がかかるのに、積み上げられたヒールおよそ140枚!通常の革靴では4-5枚といったところなので、その労力がわかるかと思います。
2ラインで打たれたベイス |
途方もなく積み上げられるヒールの革 |
バイオリンにインスパイアを受けた一足「Music」
ソールがかっこいい一足ですが、アッパーのデザインも素晴らしい。タンには金箔革をあしらい、1ホールのダービーは実際に履いてもカッコいいの間違いなし。肝心のソールは…
まるでバイオリンのようなエッジを形作り、ベイスの打ち方もバイオリンに開けられた穴「f字孔」がモチーフとなっているようです。ヴェベルドウエストに形は近いですが、それとも少し違うセクシーな腰周り。カッコいいの一言につきます。
最新作はもはやShoes Artの域を飛び出しすぎ
「『ブレードランナー』他の映画美術でその名が知られる、アメリカのデザイナー/イラストレーターのシド・ミードにインスパイアされた作品。靴底などに使われる肉厚の革にくせ付けして、曲線を表現している。一部に金箔を使用。」との説明書きがそばにありましたが、パッと見うねうねした革。
しかし、じっくりと見るとそこにも靴作りの技術の粋が集められていることがわかりました!ただのウネウネの革ではありません!ディテールには、靴作りに欠かせないウィールが用いられ、ソールを縫い合わせる技術が使われています。そして、この立体的な造形は、革を癖付けする技術を集めて作られたものです。
荒目のウィールを使って額縁づくり |
三澤氏お得意の革に金箔 |
他にもいくつも作品があり、非常に見ごたえのあるコーナーでした。いつか三澤氏に靴作りを教わってみたい!そんな気持ちにもなるように、アートだけではなく靴作りという側面からじっくりと見てみたい作品群です。
ソールに打ち込まれた釘およそ3,000本「Decorated Outsole」 |
世界的アーティストとのコラボ「Music II」 |
代名詞的作品「Gold Relief Sandals」 |
ビンテージシューズ3足解体→再構築のありえない技術「Ruins」 |
http://misawa-and-workshop.com/
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