圧倒的な情報量『紳士靴を嗜む』


この本は靴を原料レベルから分解し、靴を作るあらゆる行程を詳述し、様々なデザインをイラストと共に説明するという点では抜きん出た存在です。著者の飯野氏は服飾ジャーナリストですが、ファッション史の講師を務めていることもあり、靴に対しても非常に造詣が高い姿が伺えます。

靴の作り方を知るには、各国の文化的背景、材料となる革をなめす技術の発展と、革を縫う工作機械、革をくっつける接着剤の技術について理解する必要があります。そういった技術的背景を無視してしまうと、デザインのうんちくなど表面的な理解にとどまってしまいます。
そういった観点では、この本はコンパクトながら非常の多くの文字数をさき、靴の細部を記述しており、価値の高い本だと思います。靴マニアが「うーん、こんな背景がこの靴にはあったのか!」と膝を叩くのに最適なだけではなく、もちろん初心者の方にも有用な内容が散りばめられています。例えば本書の冒頭には
まず押さえたい6スタイル
ということで、カラーで黒の外羽根式プレーントゥから茶スエードのチャッカブーツ、まで汎用デザインが紹介されています。そしてTPOに合わせた靴の選び方、磨き方、各国の靴の特徴と主要ブランドの紹介までされており、情報量はとてつもないものを感じます。靴のお手入れの項目では、
必ず靴べらを使って履く
から始まり、
エキゾチックレザーの靴のお手入れ
までこれさえ読めば社内で一番の靴知識の持ち主になれるくらい情報が詰まっています。

靴の初心者からベテランまで新たな知識を植え込むのに最適な一冊。新たな気持ちで靴を磨けるようになる、そんな一冊です。

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