靴職人と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか。いわゆる紳士靴はイギリスが発祥の地で、靴の製造技術が磨かれていったのもイギリスを中心としていました。なので、靴職人といえばイギリスに多く存在するイメージがあります。でも、日本人からしてみると、職人という肩書はなにか日本人に染み込んだような肌触りを持ち、靴職人と聞いても漆職人や筆職人など◯◯職人と同じような感性で捉えてしまう人も多いでしょう。しかし、前段説明したように日本における靴製造の歴史はさほど深くなく、世界大戦を前後とした時期が始まりです。
日本において靴職人の第一人者である関信義氏は、第二次世界大戦後に靴職人としての技術を様々な工場で磨いていきます。もともと父が靴修理の職人だったこともあり、小さい頃から靴に慣れ親しんでいたこと、そして生まれ持った手先の器用さや感性が靴作りという仕事に強く適合していました。その為、修行期間も他の職人の半分の時間で卒業し、早くからアウトワーカーとして技術を磨いていくことになります。関氏は、職人が作る靴に対する美学を以下のように述べています。
あれもこれも手を出さず、まず並短をきわめろ。その靴には職人の美学が詰まっている。
手製靴職人のよりどころは、艶にある。それこそが機械でつくられた靴がどう頑張っても太刀打ちできない職人仕事の真髄である。
関氏は、靴作りにその人生を注ぐ傍ら後身の育成に務め、数々の弟子を世に輩出しています。昔気質の職人でありながら、その姿勢には今のリーダーが見習うべき親方のあるべき姿が透けて見えます。
ぶっきらぼうで口が悪い、終始そんな人物像で語られている本書ですが、その背景には、靴作りに一生を捧げながらも、機械化の進む靴産業の中で手製靴職人が生き残るためにどうしたらいいか、という関氏の産業論も垣間見える構成となっています。
靴作りを志す人は必読の書ですが、組織のリーダーとしても得るものが多くある本です。
0 件のコメント :
コメントを投稿